遺産相続手続きや節税の方法を税理士が解説|相続お助け110番

特定の子に多く相続させたい場合

遺言者が相続割合を決める際には、自分の家族それぞれに対する愛情は同じであっても、財産承継(財産を誰にどのくらい渡すか)という点では異なる結果になる場合があります。
自分に長く寄り添ってくれた長男に多く相続させたいと思った場合、遺言書でその旨を記載する事になります。

相続は民法で、相続人、相続の順位、法定相続分などが定められています。
したがって、遺言による相続は、法定相続に優先するので、相続分を変更することができますが、遺言書の効力を持ってしても遺留分を侵害することはできません。

遺言による相続で注意したい遺留分とは

遺留分とは、遺言や生前贈与によっても害することのできない一定の親族のための権利です(民法1028条)。

遺留分は一定の範囲の相続人に認められています。
遺言で相続分をゼロとされた法定相続人でも一定の範囲で財産を受け取ることができます。

このような遺留分の制度は、遺言の内容にかかわらず相続人固有の権利を守り、保護する事を目的としています。

遺留分を主張できる人は誰?

遺留分を有する相続人を遺留分権利者といいますが、相続人全てが遺留分権利者というわけではなく、配偶者、子、直系尊属にのみ認められた権利です。
兄弟姉妹には遺留分はありません。

遺留分はいくらまで?

遺留分は相続人保護の為に設けられた制度ですが、全ての財産について法定相続分を取り戻すことができるわけではありません。

直系尊属だけが遺留分権利者である場合は、法定相続分の3分の1で、それ以外の場合は法定相続分の2分の1になります。

遺留分権利者が複数いる場合は、法定相続分に応じて遺留分を決定することになります。

遺留分で起きる相続争いを防ぐには

遺言書の内容によって相続人が遺留分を主張した場合、遺言者が望まない相続争いが起きる可能があります。

遺留分を侵害された相続人は遺留分を侵害している者に対して請求をすることで、遺留分を取り戻すことができます。

しかし、話し合いがまとまらないときは訴訟になり、望んでいた形で特定の子どもに多くの財産を渡すことができなくなる場合があります。

子によって相続分に差がある場合、相続争いが起きないための遺言書の工夫

法定相続人がいる場合には、遺言書に全ての財産を特定の者に譲り渡す内容を記載すると遺留分の問題が生じるため、法定相続人の遺留分を侵害しない程度の相続分を割り当てる事が大切です。

また、遺言書には付言事項を設ける事ができます。
この付言事項を使って遺言者の気持ちを相続人に伝えることができます。

付言事項の具体例

3人の子どものうち、1人だけに多く財産を相続させたい場合の具体例です。

【付言事項の具体例①】

(付言事項)
A男、B美、C子、皆今までありがとう。
幸せな人生でした。私には財産が土地と建物しかありません。
この土地と建物は私の介護をしてくれたC子に譲ります。
C子は介護のため、結婚後も自宅を購入せず、ずっと私と同居してくれました。
A男、B美には何も残せませんので、兄弟で不均衡になってしまったことは否めません。

ですが、どうぞご理解をいただき、兄弟仲良く助け合っていって下さい。

みんな、今までどうもありがとう。
これからも兄妹仲良く幸せに過ごして下さい。
私は、天国の片隅からみんなの事を見守っています。

【付言事項の具体例②】

(付言事項)
A男、B美、C子に特に言い残しておきたいことがあります。

3人がまだ幼い頃、妻の花子が脳卒中で倒れ、以来妻の介護生活が始まりました。
働き盛りだった私は毎日会社の仕事を持ち帰り、妻の介護の合間に寝る間も惜しんで仕事に励みました。

一家の主として、男として、妻に代わって3人の子どもを育て上げなければ、という責任を感じていました。

そんな私を幼い頃から気遣い、友達と遊ぶ時間も削って介護を手伝ってくれたのが長男のA男でした。
A男は大学進学も諦め、就職してからも家にお金を入れてくれて、B美、C子を大学へ進学させる事ができました。

今まで幼い頃から家のため、B美、C子のために尽くしてくれたA男に私の全ての財産と不動産を相続させようと思います。

上記の理由を考慮して円満に相続を行って欲しい。

みんな、今までどうもありがとう。
これからも兄妹仲良く幸せに過ごして下さい。

付言事項の重要性

遺言の内容は大きく2種類で構成されており、法定遺言事項付言事項です。
法定遺言事項とは一般的な財産の承継に関する事項が記載されており、付言事項とは遺言者の家族へのメッセージなどを記載します。

遺言書を記載するにあたって、財産承継の内容について不満を持つ相続人が存在することも想定されます。

しかし、遺言者がどうしてそのような財産承継を望んだかがわかる経緯などを付言事項を書くことにより、遺言事項が円滑に実現された例もあります。

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